接骨院・鍼灸院・あん摩マッサージ院がチラシや看板等で広告できる内容は、柔道整復師法やはり師、きゅう師、あん摩マッサージ指圧師に関する法律によって制限されています。
では、なぜこのような広告規制があるのでしょうか。また、接骨院等の広告作成ではどのようなことに気を付ければよいのでしょうか。
目次
広告の制限は「患者保護」のため
実際の効果を偽ったり、何でもかんでも健康保険が使えるといった、患者さんに誤解を与える表現や誇大と思われる表現の広告があれば、患者さんが被害を受けてしまいます。
つまり、患者さんの身体を守り、かつ、経済的損失を受けないようにするための、いわば「患者保護」のために広告の制限があります。
違法な広告による患者の誘引の禁止
平成29年9月4日発出(10月1日適用)の厚生労働省の通知『「柔道整復師の施術に係る療養費について」の一部改正について』で、違法な広告により患者を施術所へ施術を受けるように誘引してはならないことが追加されました。
具体的な例は示されていませんが、柔道整復師法における広告の制限やその他の法律を順守しなければならないことが明確化されました。
接骨院等の広告作成で気を付けることは?
患者さんを守るための「広告の制限」。
それでは、チラシや看板、ホームページなどで広告するときにどのようなことに気を付ければよいのでしょうか。
チラシ
院外で配布する紙は広告の制限の対象です。
詳しくは、
・接骨院等の広告規制
・厳しくなる「広告の制限」の取り扱いについて
をご覧ください。
看板
接骨院等の看板も広告の制限の対象です。
看板だけでなく、ドアや窓に貼ってあるものなど外から見えるものは広告の対象となります。
患者さんだけでなく、近隣の方や同業者など前を通る多くの人が目にすることになるので、内容を再確認してください。
ホームページ、院内のポスター・パンフレット
ホームページや院内掲示のポスター、院内設置のパンフレット等は、現在のところ広告の制限の対象外ですが、誇大広告と思われる表現や患者さんの誤解を招く表現は避け適正な表現にする必要があります。
また、保険適用と保険適用外とは必ず適切に分けて、誤解を招かない書き方をしましょう。
受領委任取扱い規定において「一部負担金はこれを減免または超過して徴収しないこと」となっています。一部負担金の割引き・割増表記などは違反事項です。
※自費施術は除く
チラシと違い、ホームページはいつでも見ることができるため、患者さんや同業者からの指摘により、保健所や地方厚生局などにチェックを受けやすいといえます。
なお、平成29年8月24日より「医療機関ネットパトロール」(医業等に係るウェブサイトの監視体制強化事業)がスタートしましたが、接骨院・鍼灸院のホームページは監視対象外です。
⇒ 新規の患者さんが接骨院を選ぶ3つのポイントとは
広告規制に関して詳しくは管轄の保健所にお問い合わせください
景品表示法
景品表示法上の「景品類」とは、
(1)顧客を誘引するための手段として、
(2)事業者が自己の供給する商品・サービスの取引に付随して提供する
(3)物品、金銭その他の経済上の利益
であり、景品類に該当する場合は、景品表示法に基づく景品規制が適用されます。
ウェブサイトの表示、院内掲示のポスターや院内設置のパンフレット等は広告規制の対象にはなりませんが、景品表示法は適用されます。
例えば、合理的な裏付けがない「○○県でNo.1」や「○○での患者数日本一」などと記載する優良誤認表示や、実際にはずっと半額で行っている自費施術を「今だけ半額」と記載する有利誤認表示が違反になります。
また「すぐにガンが治る」など、誇張・誇大な表現も景品表示法違反になります。
院内で「患者さんの声」を掲示する際には、これに対して「※個人の感想です」などの注意書きがある場合でも、景品表示法違反になる事例も公表されています。
⇒ 「個人の感想です」と書いても違法になる場合も
また、g〇〇gle Mapや口コミサイトなどの口コミや、体験談などにも規制(ステルスマーケティング規制)があります。
これは、有名人が勧めていた商品が、実は謝礼をもらって広告していたことで、消費者に誤解と不信感を与える事例がきっかけになった規制です。
有名人か一般の患者かは関係なく、謝礼や割引サービスと引き換えにg〇〇gle Mapや口コミサイトに書き込みをお願いした場合、その口コミには「広告」「PR」などをわかりやすく表記する必要があります。
⇒ 【ステマ規制】「広告」「PR」などと書いても違法になる場合も
⇒ 【ご注意ください】ホームページの表示に景品表示法違反で措置命令
薬機法(旧薬事法)
健康食品・サプリメント販売にあたって、効果効能を表示することは薬機法(旧薬事法)違反になります。ご注意ください。
個人情報
患者さんの個人情報、例えば自分の施術所に通院している患者さんのコメント・写真等をホームページに載せる場合などは、必ず本人の了承をとりましょう。
著作権
チラシなどの紙媒体やホームページの内容(文章や写真)を無断で複製し、自分のチラシ等に転用すると著作権法違反で損害賠償責任などを負うことになります。
使用する場合は著作権者の許可を必ず得ましょう。
著作権については次ページもご確認ください。
広告規制に違反するとどうなる?
患者さんや同業者からの指摘により、保健所や地方厚生局などから注意・指導を受ける可能性があります。また、法律ではこの規定に違反した者は30万円以下の罰金に処するとしています(柔道整復師法第30条第5号、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律第13条の8)
広告会社によっては、接骨院等の広告の制限の知識が少ないことがあります。
業者が作成したものでも、広告物は全て発行した施術所の責任になるので、ご自身で内容をよく確認しましょう。
広告規制に関しては管轄の保健所にお問い合わせください
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新患獲得のために「時間」と「広告費」を使っていますか?
著作権とは
著作権とは
著作権は、著作物を創造した著作者にかかる権利です。ごく簡単にいうと、何かを作ったときにそれを作った人に与えられる権利です。
著作者には、2つの権利が認められています。
1つは、著作者が著作物をいつどのように公表するか、名前を載せるかなどを決めたり、タイトルや内容を勝手に変えられないという「著作者人格権」、
もう1つは、複製権、上演権・演奏権、上映権など、財産的な利益を保護する「著作権(財産権)」があります。
著作物とは
著作物は人のマネをせずに創作的に表現されていれば権利が発生します。
最近何かと話題の「音楽」や「小説」「絵画」「写真」はもちろん、建物や地図、事典や新聞、そして「インターネット上の表現」にも権利が認められています。
特に手続きは必要なく、世に出た時点で権利が発生します。
世の中に公開されているものには大体のものに著作権があると思っても過言ではありません。
ただし憲法や法令、通達、判決など著作権がないものもあります。
著作物を無断で使うとどうなるの
著作権がある著作物を著作者の許可を得ないで無断で使うと、著作権の侵害になります。
著作権を侵害していると知っていながらその著作物を譲渡や貸与をすることも著作権の侵害になります。
著作権の侵害は犯罪ですので、侵害された著作権者が刑事告訴すれば罰せられます。最高で10年以下の懲役か1,000万円以下の罰金です。
日本の裁判所は著作権侵害にとても厳しく、初犯でも懲役5年となったケースもあります。
懲役5年は執行猶予がつきませんので、即収監という可能性があります。
また、併せて民事での裁判になってしまった場合、損害賠償請求、侵害行為で得た利得の返還、謝罪広告などを請求されることになります。
著作物を使う場合は
許可を取る
著作権者の許可があれば使用できますので、必ず許可を取る必要があります。
素材サイトから購入する場合は、その素材を使用できる範囲や使用方法などを必ず確認しましょう。
「引用」する
許可なしに本や論文の一部をそのまま引用して使えます。
引用には下記のルールがあります。
- すでに公表されているもの
- 引用部分がはっきりと区別されている(「」や“”で区切る)
- 引用部分が主体になっていない(本文10%、引用90%はダメ)
- 引用しなければならない理由がある
- 引用元を明記している
となっています。
また著作権には「勝手に変えられない権利」があるので、引用する場合はそのまま使わなければなりません。
許可なく要約することは著作権の侵害になります。
「参考」「参照」する
参考や参照することに明確なルールはありませんが、参考元・参照元は明記しておきましょう。
内容をそのまま全部使ったり、語尾などを少しだけ変えただけというのは著作権の侵害になります。
音楽著作権について
待合室などで流すBGM。CDやインターネットなどで取り込んだ楽曲を許可なく待合室で流すことは、著作権法にふれます。
著作権法にふれずにBGMを流すには次のようなものがあります。
- 「JASRAC(一般社団法人日本音楽著作権協会」と契約を結ぶ(有料)
- 有線放送と契約する(有料)
- ラジオ放送を使用する(無料)
JASRACについてはこちらをご確認ください。
接骨院で流すBGM(背景音楽)は、著作権法にふれるの?
「患者さんの声」も著作物
患者さんに書いてもらう「患者さんの声」も著作物です。
印刷物やHPなどに掲載する場合は、事前に患者さんに許可を取りましょう。
インターネット上の画像について
インターネット上の画像にも著作権がありますので、無断で使用すると著作権侵害になります。
また、インターネット上には「無料」や「著作権フリー」となっている画像がたくさんありますが、こちらも利用するには注意が必要です。
著作権は放棄しておらず、掲載使用上の注意や商用利用不可などの条件を利用者が利用規約で定めていることが多いですので、
必ず利用規約を確認してから使いましょう。
肖像権について
肖像権とは、他人から無断で写真や映像を撮られたり無断で公表されたり利用されたりしないように主張できる権利のこと。
肖像権に関することを法律で明文化されていないが、判例によって認められています。
患者さんの写真を勝手に印刷物やホームページ等に掲載することは肖像権の侵害になります。
掲載する場合は、事前に患者さんに許可を取りましょう。