「カルテ」と聞くと接骨院や病院など、医療機関のものと思われていませんか?
「カルテ」は、患者の病状、処置、経過などを記録していくものです。これだけを見れば医療機関だけのもののようです。
でも実はいろんなところで「カルテ」は作られて『集客』に活用されています。
しかもこれから紹介する事例「美容院」や「服飾店」はカルテ作りに文字通り『命』をかけています。
美容院
男性の先生は美容院には行ったことがないかもしれません。最寄りの駅周辺を見渡してみると、接骨院と同じように美容院もいたるところにあります。美容院は髪を切るところですから健康保険はもちろん使えません。
美容院は新規客ばかり集めても限界があります。ですからどこもリピーターの確保に必死です。これも接骨院と同じはずです。
美容院で作られているカルテには、氏名などの基本情報のほかに、こういったものも記入されています。
- 初回来店日
- 利用したコース
- 支払額
- 客との会話で得られた情報(家族構成・職業・趣味・好きな食べ物など細かければ細かいほど良い)
- 次回来店の可能性(会話などから予測)
美容院はこれらを使って御礼の手紙やメルマガなどを送っています。一定期間来店がない客にDMを送ったり、リピーターでも誕生日や暑中見舞い、年賀状などでアプローチします。定期的なアプローチで忘れられないようにするためです。美容院では客とのアプローチに使うために、カルテはいつでも使える状態で整備されています。
服飾店
オーダースーツを作られたことがある方なら経験があるかと思いますが、スーツを作るにあたって必要な情報はサイズです。ではこれ以外に残しておくべき情報がないかといえば、もちろんそんなことはありません。こういった店でも「カルテ」が整備されています。
こちらのカルテの内容も美容院と同じく、
- 初回来店日
- 購入したスーツの種類(オーダーなので生地やボタンの種類まで)
- サイズ
- オーダーにする理由
- 支払額
- 客との会話で得られた情報(家族構成・職業・趣味・好きな食べ物など細かければ細かいほど良い)
- 次回来店の可能性(会話などから予測)
などとなっています。
美容院と違って常連であっても、陳列されている商品を見るだけで帰ってしまう場合がありますし、いつ来店があるかもわかりません。それでも「新しいスーツを作りたい」と客が言った瞬間、カルテの出番になります。
カルテを使ってファンを作る
美容院も服飾店も頻繁に通うところではありません。1ヶ月以上半年ぶりということも珍しくないはずです。
それでもカルテが整備されていれば、前回の会話内容やどんなコースでどんな髪型にしたのかを話題にできます。すると人間というものは不思議なもので、「久しぶりの来店なのに覚えてくれているなんて」と親近感を覚えます。場合によっては感動する客もいるかもしれません。そうなると「また来たい」と思うようになり、上顧客になっていくのです。
服飾店も決算セールなどでキャンペーンを張ります。その1回だけの来院では売上は低くなってしまいます。でもリピーターであれば、キャンペーン以外のタイミングでもスーツを作ってくれるかもしれません。オーダースーツは顧客ができたものを取りに来るのでそのときにカルテを使って客を感動させられれば、リピーターになって再来店につながるのです。
カルテ(施術録)の作成例
カルテはリピーター患者を増やすために必須です。
先生の院で実費施術の初回お試ししか来なかった患者さんはいませんか?保険施術でも1回しか来院しなかった患者さんはいませんか?そういった患者さんを掘り起こすにはカルテが必須になるのです。
保険施術の場合
接骨院の場合、療養費を請求する場合は実費施術分とは別に、施術録を作成しなければなりません。
施術録については通知(「柔道整復師の施術に係る算定基準の実施上の留意事項(平9.4.17保険発57)(平14.9.27保医発0927003)-第6 施術録について」)によると、施術録の記載事項を以下のように定めています。
施術録の記載事項
(1)受給資格の確認
ア 保険等の種類
①健康保険(協・組・日) ②船員保険 ③国民健康保険(退)
④共済組合 ⑤後期高齢 ⑥その他
イ 被保険者証等
①記号・番号 ②氏名 ③住所・電話番号 ④資格取得年月日
⑤有効期限 ⑥保険者・事業所名称及び所在地 ⑦保険者番号 等
ウ 公費負担
①公費負担者番号 ②公費負担の受給者番号
エ 施術を受ける者
①氏名 ②性別 ③生年月日 ④続柄 ⑤住所
オ 一部負担割合
0割・1割・2割・3割等
◎以上のことは被保険者証等から転記するほか、必要な事柄は患者から直接聞いて記載する。
◎月初めに適宜、保険証を確認するなど、必要な措置を講ずること。(2)負傷年月日、時間、原因等
正しく聴取して必ず記載すること。
①いつ
②どこで
③どうして(3)負傷の状況、程度、症状等
近接部位の場合は、その旨表示又は図示すること。(4)負傷名
第1から第5までにおいて算定対象となる負傷名を記載すること。(5)初検年月日、施術終了年月日
(6)転帰欄には、治癒、中止、転医の別を記載すること。
(7)施術回数
(8)同意した医師の氏名と同意日
(9)施術の内容、経過等
施術月日、施術の内容、経過等を具体的に順序よく記載すること。
初検時相談支援の内容は、①及び②については、簡潔に記載するとともに、③については、説明した旨を記載すること。
① 日常生活動作上での励行事項や禁止事項(入浴、歩行、就労制限、運動制限等)
② 患部の状態や選択される施術方法などの詳細な説明(施術計画等)
③ 受領委任の取扱についての説明(対象となる負傷、負傷名と施術部位、領収証の交付義務、申請書への署名の趣旨等)(10)施術明細
① 初検月日、時間外等の表示、初回施術、初検料(加算=休日・深夜・時間外)、往療料 km(加
算=夜間・難路・暴風雨雪)、金属副子等、その他
② 再検料、往療料、後療料、罨法料、電療料、包帯交換、その他
③ 上記について施術後その都度、必要事項及び金額を記入すること。
④ 一部負担金、長期・多部位の定額料金等、窓口徴収の金額は正確に記入すること。
⑤ 施術所見を記入すること。(11)施術料金請求等
請求年月日、請求期間、請求金額、領収年月日(12)傷病手当金請求等
傷病手当金証明に関する控えとして、労務不能期間、施術回数、意見書交付年月日
以上のようになっています。また9月4日発出の同通知には、
保険者等又は柔整審査会は、療養費の請求内容に不正又は著しい不当があるかどうかを確認するために施術の事実等を確認する必要がある場合には、施術管理者に対して領収証の発行履歴や来院簿その他通院の履歴が分かる資料の提示及び閲覧を求めることができること
とあり、資料の提示及び閲覧を求められた場合は速やかに応じる必要があります。「施術録」とは書かれていないものの領収証の発行履歴も来院簿もない場合に、施術録の提出を求められる可能性があります。
実費施術の場合
実費施術分のカルテは書き方に決まりはありませんが、患者さんの囲い込みに使うにはこのようになるのではないでしょうか。
- 初検日(以降の来院日も)
- 負傷日時、原因、症状、痛みによりできなくなってしまったこと、治療内容、治療計画、経過など
- 患者さんとのやり取り、家族や第三者に説明した場合は氏名と内容
- 利用したコース(実費施術の場合)
- 支払額(保険施術と実費施術は分ける)
- 患者さんとの会話で得られた情報(家族構成・職業・趣味・好きな食べ物など細かければ細かいほど良い)
- 次回積極的な来院の可能性(会話などから予測)
- DMを送付しても良いか
この情報を受付スタッフや他の施術者に共有することで、患者さんを感動させることもできるでしょう。
接骨院は広告の制限によって、宣伝広告できることが限られています。
ただし、院内で配布するリーフレットや患者さんが希望されて直接家に送るDMは広告の制限の対象にはなりません。できることをどんどん活用すべきです。
会話も大切
美容院などではカルテを整備するために、日々会話術のトレーニングをしているそうです。
また髪を切る技術よりも会話術の方が指名に結び付くそうです。
特に饒舌である必要はありませんが、少なくともカルテの項目を埋められるぐらいの情報収集はできるようになりたいですね。
患者さんの話を聞いて、痛みに理解をしめし施術を行う。それらをカルテに記録し、次の会話やDMなどでリマインドする
その積み重ねが、何かあったときに「あの先生にみてもらおう!」とリピートにつながるのです。